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重症多形滲出性紅斑に関する調査研究

 中毒性表皮壊死症 (TEN)

CEO 死亡率が最も高い薬疹で、皮膚・粘膜に赤い斑と水疱・ただれなどが広範囲に出現し、全身倦怠感や高熱が出現する病型です。経過中に敗血症などを合併することがあります。スティーブンス・ジョンソン症候群とは一連の病態で、その最重症型としてとらえられています。しばしば眼の合併症をともない、時に視力障害やドライアイなどの後遺症を残します。






原因となりやすい薬剤

 消炎鎮痛薬や抗菌薬、尿酸を下げる薬(アロプリノール)、抗けいれん薬などが原因となることが多いようです。


診断基準

(1) 概念
 広範囲な紅斑と全身の10%以上の水疱・びらん・表皮剥離など顕著な表皮の壊死性障害を認め、高熱と粘膜疹を伴う。原因の多くは医薬品である。

(2) 主要所見(必須)
  1. 広範囲に分布する紅斑に加え体表面積の10%を超える水疱・びらんがみられる。外力を加えると表皮が容易に剥離すると思われる部位はこの面積に含める(なお、国際基準に準じて体表面積の10〜30%の表皮剥離は、SJS/TENオーバーラップと診断してもよい。)。
  2. 発熱がある。
  3. 以下の疾患を除外できる。

    ・ ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded skin syndrome:SSSS)

    ・ トキシックショック症候群

    ・ 伝染性膿痂疹

    ・ 急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)

    ・ 自己免疫性水疱症

(3) 副所見
  1. 初期病変は広範囲にみられる斑状紅斑で、その特徴は隆起せず中央が暗紅色のflat atypical targetsもしくはびまん性紅斑である。斑は顔面、頸部、体幹優位に分布する。
  2. 皮膚粘膜移行部の粘膜病変を伴う。眼病変では偽膜形成と眼表面上皮欠損とのどちらかあるいは両方を伴う両眼性の急性結膜炎がみられる。
  3. 全身症状として他覚的に重症感、自覚的には倦怠感を伴う。口腔内の疼痛や咽頭痛のため、種々の程度に摂食障害を伴う。
  4. 病理組織学的に表皮の壊死性変化を認める。完成した病像では表皮の全層性壊死を呈するが、軽度の病変でも少なくとも200倍視野で10個以上の表皮細胞(壊)死を確認することが望ましい。

(4)診断
 副所見を十分考慮の上、主要所見3項目のすべてを満たすものをTENとする。初期のみの評価ではなく全経過を踏まえて総合的に判断する。慢性期(発症後1年以上経過)では眼瞼および角結膜の瘢痕化がみられる。

<参考>
1)サブタイプの分類

・ SJS進展型(TEN with spotsあるいはTEN with macules)

・ びまん性紅斑進展型(TEN without spots、TEN on large erythema)

・ 特殊型:多発性固定薬疹から進展する例など

2)びまん性紅斑に始まる場合、治療等の修飾により、主要所見の表皮剥離体表面積が10%に達しなかったものを不全型とする。



治療

 原因として疑われる薬剤を中止し、入院して治療する必要があります。
皮膚・粘膜への局所の処置に加えて眼科的管理、補液・栄養管理、感染防止が重要です。通常、ステロイド薬を第一選択とし、重症例では発症早期にステロイドパルス療法を含む高用量のステロイド薬を投与します。さらにステロイド薬で効果がみられない場合には免疫グロブリン製剤静注療法や血漿交換療法を併用します。