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重症多形滲出性紅斑に関する調査研究

 スティーブンス・ジョンソン症候群 (SJS)

CEO

 高熱を伴い皮膚と粘膜の境界部(口周囲、鼻孔周囲、肛門周囲、陰部など)に紅斑、水疱が出現する病型で、水疱は簡単に破れてびらんとなります。しばしば眼の合併症をともない、時に視力障害やドライアイなどの後遺症を残します。
大部分が薬剤によりますが、マイコプラズマ感染症などが引き起こすこともあります。


発症しやすい薬剤

 消炎鎮痛薬や抗菌薬、尿酸を下げる薬(アロプリノール)、抗けいれん薬などが原因となることが多いようです。


診断基準

(1) 概念
 発熱と眼粘膜、口唇、外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹を伴い、皮膚の紅斑と表皮の壊死性障害に基づく水疱・びらんを特徴とする。医薬品の他に、マイコプラズマやウイルスなどの感染症が原因となることもある。

(2) 主要所見(必須)

  1. 皮膚粘膜移行部(眼、口唇、外陰部など)の広範囲で重篤な粘膜病変(出血・血痂を伴うびらん等)がみられる。
  2. 皮膚の汎発性の紅斑に伴って表皮の壊死性障害に基づくびらん・水疱を認め、軽快後には痂皮、膜様落屑がみられる。その面積は体表面積の10%未満である。ただし、外力を加えると表皮が容易に剥離すると思われる部位はこの面積に含まれる。
  3. 発熱がある。
  4. 病理組織学的に表皮の壊死性変化を認める*。
  5. 多形紅斑重症型(erythema multiforme [EM] major)**を除外できる。
(3) 副所見
  1. 紅斑は顔面、頸部、体幹優位に全身性に分布する。紅斑は隆起せず、中央が暗紅色のflat atypical targetsを示し、融合傾向を認める。
  2. 皮膚粘膜移行部の粘膜病変を伴う。眼病変では偽膜形成と眼表面上皮欠損のどちらかあるいは両方を伴う両眼性の急性角結膜炎がみられる。
  3. 全身症状として他覚的に重症感、自覚的には倦怠感を伴う。口腔内の疼痛や咽頭痛のため、種々の程度に摂食障害を伴う。
  4. 自己免疫性水疱症を除外できる。
(4)診断
 副所見を十分考慮の上、主要所見5項目を全て満たす場合、SJSと診断する。初期のみの評価ではなく全経過の評価により診断する。慢性期(発症後1年以上経過)では眼瞼および角結膜の瘢痕化がみられる。慢性期で粘膜病変が眼瞼および角結膜の瘢痕化の場合、主要所見4は必須ではない。


<参考>

1)多形紅斑重症型との鑑別は主要所見1〜5に加え、重症感・倦怠感、治療への反応、病理組織所見における表皮の壊死性変化の程度などを加味して総合的に判断する。眼瞼および角結膜の瘢痕化をきたすことはなく、慢性期の瘢痕化は鑑別の重要な所見である。

2)*病理組織学的に完成した病像では表皮の全層性壊死を呈するが、少なくとも200倍視野で10個以上の表皮細胞(壊)死を確認することが望ましい。

3)**多形紅斑重症型(erythema multiforme [EM] major)とは比較的軽度の粘膜病変を伴う多形紅斑をいう。皮疹は四肢優位に分布し、全身症状としてしばしば発熱を伴うが、重症感は乏しい。SJSとは別疾患である。

4)まれに、粘膜病変のみを呈するSJSもある。


治療

 原因として疑われる薬剤を中止し、入院して治療する必要があります。
皮膚・粘膜への局所の処置に加えて眼科的管理、補液・栄養管理、感染防止が重要です。通常、ステロイド薬を第一選択とします。重症例やスティーブンス・ジョンソン症候群から中毒性表皮壊死症へ進展した場合にはステロイドパルス療法を含む高用量のステロイド薬を投与します。