ラモトリギンは、抗てんかん薬、双極性障害治療薬として精神科領域で一般的に用いられる薬剤です。一方、ラモトリギンは多くの薬疹を起こすことでも知られています。重症薬疹であるStevens-Johnson症候群 (SJS), 中毒性表皮壊死症 (TEN)や薬剤性過敏症症候群 (DIHS)の原因にもなり注意が必要です。実際、2009年から2022年までの薬疹情報ではラモトリギンによる薬疹の報告は100例を超え、そのうち重症薬疹は7割を占めています (図)。重症薬疹は、軽症の播種状紅斑丘疹型 (MP) や多形紅斑型薬疹 (EM)と比較して致死的な経過を辿るのみでなく、亜急性期や回復期にかけて様々な合併症、後遺症を生じうる点が問題点として挙げられています。SJS/TENでは失明などの視力障害を含めた眼合併症や閉塞性細気管支炎などの肺障害、DIHSではサイトメガロウイルス再活性化による臓器障害や甲状腺機能低下症、関節リウマチなどの自己免疫疾患を合併することが知られています。
この様な重症薬疹症例にとって医薬品副作用被害救済制度は重要な意味を持っています。特に難病申請の適応とならないDIHSにおいて医薬品副作用被害救済制度は唯一の公的な援助でもあります。2018年度から2022年度までの本救済制度の医薬品の使用方法等が適正と認められずに救済の対象とならなかった事例のうち、ラモトリギンは常に該当薬品の上位を占めてきました。2022年度にかけ減少傾向にあるものの、依然として不適正使用事例の約1割を占めています。今後、不適正事例の減少を目指し継続的な注意喚起を行なっていく予定です。
DIHS 薬剤性過敏症症候群:MP 播種状紅斑丘疹型薬疹:TEN 中毒性表皮壊死症:
SJS スティーブンス・ジョンソン症候群:EM 多形紅斑型薬疹:Others その他